個人事業主・フリーランスの休業補償とは?病気やケガで働けないときの備えをわかりやすく解説 - 30代・40代会社員のキャリア選択ナビ

個人事業主やフリーランスとして独立すると、自分の裁量で仕事ができる反面、会社員とは違ったリスクも背負うことになります。

そのひとつが、病気やケガで働けなくなったときの収入減少です。

会社員であれば、勤務先の健康保険に加入している人について、業務外の病気やケガで仕事を休み、一定の条件を満たした場合に「傷病手当金」が支給される制度があります。

協会けんぽの場合、傷病手当金の支給期間は、支給開始日から通算して最長1年6か月です。

一方、個人事業主やフリーランスの多くが加入する国民健康保険では事情が異なります。

国民健康保険法では、市町村や国民健康保険組合が条例や規約によって傷病手当金などを支給することは可能とされていますが、会社員の健康保険と同じように一律で傷病手当金が支給される仕組みではありません。

つまり、

「病気で1か月働けなくなった」

「仕事中の事故でケガをしてしまった」

「交通事故で長期間仕事ができなくなった」

というときに、フロー型の仕事の場合は売上がそのまま減ってしまう可能性があります。

しかも、仕事を休んだからといって生活費や事業の固定費まで止まってくれるわけではありません。

そこで考えておきたいのが、個人事業主・フリーランスの休業対策です。

この記事では、個人事業主やフリーランスが働けなくなった場合に利用できる可能性がある公的制度や労災保険、所得補償保険、就業不能保険などについて、独立したばかりの人にも分かるように解説します。

※本記事は2026年9月時点の公的情報をもとに一般的な制度を解説しています。実際の給付条件や保険金の支払条件は、加入制度や契約内容によって異なります。

目次 Outline

個人事業主・フリーランスにとっての「休業補償」とは?

 

まず理解しておきたいのが、「治療費への備え」と「働けない期間の収入への備え」は別だということです。

例えば、病気で入院して30万円の医療費がかかったとします。

公的医療保険や医療保険によって医療費の負担を軽減できたとしても、その間に仕事ができず、売上が50万円減ってしまったのであれば、収入面では別の問題が残ります。

特に一人で仕事をしている個人事業主の場合、

自分が働けない=売上が発生しない

というケースが少なくありません。

そこで必要になるのが「働けない期間の収入」をどう確保するかという考え方です。

本記事では広い意味でこれを「休業補償」と呼びますが、実際には制度によって名称や対象が異なります。

制度・保険主な役割
公的医療保険医療費の負担を軽減する
傷病手当金業務外の病気・ケガによる休業時の生活保障
労災保険仕事・通勤が原因のケガや病気などを補償
所得補償保険病気・ケガによる就業不能時の所得減少を補う
就業不能保障保険長期間働けない状態に備える
障害年金一定以上の障害状態になった場合の生活を支える
貯蓄制度で補えない生活費や事業固定費に備える

重要なのは、どれかひとつですべてのリスクに対応できるとは限らないことです。

それぞれの役割を理解し、自分に必要な備えを組み合わせていくことが大切です。

なぜ個人事業主・フリーランスには休業対策が必要なのか

会社を辞めて独立すると、「自分の売上は自分で作る」という働き方になります。

売上が伸びれば収入を増やせる可能性がある一方、自分が働けなくなれば売上が大きく落ちる可能性もあります。

特に、一人親方、美容師、カメラマン、ライター、デザイナー、コンサルタント、運送業、ITフリーランスなどは、本人の労働力と売上が直接結びついているケースが多いでしょう。

仕事を休んでも生活費はかかる

仮に1か月間まったく仕事ができなくなったとしても、

家賃や住宅ローン、食費、水道光熱費、通信費、保険料、子どもの教育費などは通常どおり必要になります。

毎月の生活費が25万円なら、3か月休業すれば単純計算で75万円です。

治療費とは別にこれだけのお金を準備する必要があります。

事業の固定費もなくならない

さらに個人事業主の場合、生活費だけではなく事業の支出も考えなければなりません。

事務所や店舗の家賃、車両代、リース代、通信費、会計ソフトやクラウドサービスの利用料、借入金の返済などは、仕事を休んでも支払いが続くことがあります。

例えば、

毎月の生活費25万円
+事業固定費10万円

なら、1か月仕事ができないだけで35万円の資金が必要です。

3か月なら105万円になります。

個人事業主の休業対策では、単純に「生活できるか」だけではなく、

生活を維持できるか+事業を維持できるか

という2つの視点が必要です。

会社員と個人事業主では傷病手当金の扱いが違う

個人事業主の休業について調べると、よく出てくる言葉が「傷病手当金」です。

しかし、ここで会社員と個人事業主を混同しないよう注意する必要があります。

協会けんぽの傷病手当金は、業務外の病気やケガによる療養のため仕事ができず、連続する3日間を含み4日以上仕事を休み、休業期間について給与の支払いがないなどの条件を満たした場合に支給されます。

支給期間は、支給開始日から通算して1年6か月です。

一方、自営業者などが加入する市町村の国民健康保険については、国民健康保険法上、市町村や国保組合が条例・規約によって傷病手当金を支給できる仕組みになっています。つまり、会社員向け健康保険の傷病手当金と同じ制度が全国一律で用意されているわけではありません。

そのため、

「会社員時代にもらえたから、独立してからも同じ」

と考えないことが重要です。

独立したら、自分が加入している健康保険について、

「働けなくなった場合にどのような給付があるのか」

を一度確認しておきましょう。

個人事業主・フリーランスでも労災保険に加入できる

個人事業主の休業対策として、まず確認しておきたい制度のひとつが労災保険です。

本来、労災保険は労働者を対象とした制度ですが、一定の自営業者や一人親方などには「特別加入制度」があります。

さらに2024年11月1日から制度が拡大され、企業などから業務委託を受けるフリーランスについては、一定の要件のもと、業種・職種を問わず労災保険に特別加入できるようになりました。

これはフリーランスにとって大きな変更です。

以前は、

「建設業など一部の仕事しか関係ない制度」

という印象を持っていた人もいるかもしれません。

現在は、企業などから業務委託を受けて仕事をする幅広いフリーランスについて、特別加入を検討できるようになっています。

ただし、企業などから業務委託を受けていない場合など、対象にならないケースもあります。自分がどの特別加入区分に該当するのか、加入団体や労働局などで確認することが重要です。

労災保険の特別加入ではどんな補償を受けられる?

労災保険に特別加入すると、仕事中や通勤中のケガや病気などについて一定の補償を受けられます。

主な給付としては、治療に関する療養(補償)等給付、仕事を休んだ場合の休業(補償)等給付、障害が残った場合の障害(補償)等給付、死亡した場合の遺族(補償)等給付などがあります。

休業時に特に関係するのが、

休業(補償)等給付

です。

仕事や通勤が原因となったケガや病気による療養のため仕事ができないなどの要件を満たす場合、休業4日目以降について、休業1日につき給付基礎日額の60%相当の保険給付と20%相当の休業特別支給金を合わせ、原則として給付基礎日額の80%相当が支給されます。

例えば給付基礎日額を1万円とした場合、単純計算では、

1万円×80%=8,000円

が休業1日当たりの目安になります。

ただし、実際の支給については事故・疾病の状況や給付要件などによって判断されます。

また、フリーランスなどの特別加入者では、給付額の基礎となる「給付基礎日額」を一定の範囲から選択し、労働局長の承認を受ける仕組みになっています。

厚生労働省のフリーランス向け案内では、給付基礎日額は3,500円から25,000円までの16段階から選択するとされています。

つまり、実際の売上がそのまま補償額になるわけではありません。

「どの給付基礎日額で加入するのか」は、休業時の保障を考えるうえで重要なポイントになります。

労災保険だけで個人事業主の休業対策は十分なのか

ここで注意したいのは、

労災保険に入れば、病気やケガによるすべての休業を補償してもらえるわけではない

ということです。

労災保険は基本的に、業務や通勤が原因となったケガ・病気などを対象とする制度です。

例えば建設業の一人親方が現場で転倒して骨折した場合などは、業務災害として労災保険の対象となる可能性があります。

一方、

休日に自転車で転倒した
自宅で階段から落ちた
業務と関係のない病気になった

といったケースでは、通常は「仕事が原因の災害」とは異なります。

このため個人事業主は、

仕事中の事故への備え

だけではなく、

仕事以外の病気・ケガによる休業への備え

も考えておく必要があります。

病気による長期休業も考えておく

「休業」というと、骨折など目に見えるケガを想像するかもしれません。

しかし長期間働けなくなる原因は事故だけではありません。

病気で入院したり、退院後も自宅療養が必要になったりすれば、数週間から数か月仕事ができなくなることもあります。

このとき注意したいのが、医療費と生活費を分けて考えることです。

公的医療保険には高額療養費制度があり、医療機関や薬局で支払う医療費が一定の自己負担上限額を超えた場合、その超えた額について給付を受けられる仕組みがあります。自己負担上限は年齢や所得などによって異なります。

しかし、高額療養費制度がカバーするのは基本的に医療費の負担です。

仕事ができなくなったことで失った売上まで補填してくれる制度ではありません。

例えば治療費の自己負担を10万円程度に抑えられたとしても、2か月休業して100万円の売上がなくなるのであれば、事業者にとっては収入減少の方が大きな問題になる場合があります。

だからこそ、

医療費への備えと休業による収入減への備えは別々に考える

必要があります。

所得補償保険とは?

仕事以外の病気やケガを含めて休業リスクに備える方法のひとつが、民間の「所得補償保険」です。

日本損害保険協会では、所得補償保険について、ケガや病気によって就業不能となった場合の所得の喪失を補償する保険と説明しています。

個人事業主にとって重要なのは、

治療費を補う保険ではなく、働けなくなったことによる所得減少を補う保険

という点です。

例えば毎月40万円の所得を得ていた人が、病気のため1か月間仕事ができなくなった場合、所得補償保険の契約内容によっては、その休業期間に対して一定額の保険金を受け取れる可能性があります。

ただし、

「病気になった=必ず支払われる」

わけではありません。

何を「就業不能」とするのか、何日休んだら対象になるのか、どの病気・ケガが補償されるのかなどは契約内容によって異なります。

日本損害保険協会も、所得補償保険における就業不能について、医師の治療を要し、その直接の結果として保険証券に記載された業務に全く従事できない状態などと説明しています。

加入するときは、「保険に入っている」という事実だけで安心するのではなく、支払条件まで確認しておくことが大切です。

所得補償保険と就業不能保険は同じなのか?

休業対策を調べていると、

「所得補償保険」

と

「就業不能保険・就業不能保障保険」

という似た言葉が出てきます。

どちらも働けなくなったときの収入減少に備える保険ですが、一般的には損害保険会社が取り扱う所得補償保険と、生命保険会社が取り扱う就業不能保障保険などがあります。

ただし、名称だけで単純に区別するのではなく、実際の契約内容を見ることが重要です。

生命保険文化センターによると、就業不能保障保険は、病気やケガによって所定の就業不能状態が一定期間継続した場合に、一時金・年金・月払いなど商品ごとに決められた方法で給付を受ける仕組みです。支払対象外期間や「就業不能状態」の定義などは商品ごとに異なります。

比較所得補償保険就業不能保障保険
主な目的就業不能による所得減少への備え長期の就業不能などへの備え
主な取扱い損害保険会社など生命保険会社など
給付方法契約内容による月払い・一時金など商品による
支払対象外期間商品・契約による商品による
就業不能の定義契約による商品による
精神疾患契約による対象・対象外の商品がある

特に確認したいのが「就業不能の定義」です。

本人が、

「体調が悪くて仕事ができない」

と思っている状態と、保険会社の契約上の「就業不能」が同じとは限りません。

生命保険文化センターによると、就業不能保障保険には、入院や医師の指示による在宅療養を条件とする商品や、公的制度の障害等級・要介護状態などを給付条件に含む商品があります。また、精神疾患についても対象となる商品と対象外の商品があります。

契約する場合は、保険料だけで比較せず、

「どんな状態なら受け取れるのか」

を確認しておきましょう。

医療保険があれば休業補償はいらない?

医療保険に加入しているから休業対策もできている、と考える人もいるかもしれません。

しかし目的が違います。

一般的な医療保険は、入院や手術など所定の条件に応じて給付金を受け取るための保険です。

一方、所得補償保険や就業不能保障保険は、働けないことによる収入減少への備えという性格があります。

例えばフリーランスのデザイナーが手術を受け、1週間入院した後、さらに2か月自宅療養したとします。

医療保険から入院給付金や手術給付金を受け取れたとしても、仕事ができない2か月間の売上まで自動的に補償されるわけではありません。

個人事業主の場合、

医療費はいくら必要なのか

と、

働けない期間に毎月いくら必要なのか

を分けて考えることが重要です。

長期間働けない場合には障害年金の可能性もある

病気やケガの影響が長期間続き、一定以上の障害状態になった場合には、公的制度として障害年金の対象になる可能性があります。

国民年金加入中などに初診日がある病気やケガによって一定の障害状態になり、保険料納付などの要件を満たしている場合、障害基礎年金を受給できる可能性があります。

障害基礎年金は、法令で定められた障害等級1級または2級に該当することなどが要件です。

ただし、

「仕事を1か月休んだから障害年金をもらえる」

という制度ではありません。

短期・中期の休業対策とは分けて考える必要があります。

個人事業主の休業対策は、

短期間なら貯蓄
仕事上の事故なら労災
病気・ケガによる休業なら所得補償など
長期かつ一定の障害状態なら障害年金

というように、それぞれの制度の役割を理解することが重要です。

個人事業主はいくら休業資金を用意すればいい?

では、実際にいくら備えればいいのでしょうか。

まずやるべきなのは、

1か月仕事ができなかったら、いくら必要なのか

を計算することです。

例えば、次のような個人事業主を考えてみます。

支出月額
住宅費80,000円
食費・生活費100,000円
水道光熱費・通信費30,000円
保険・その他40,000円
事務所・仕事場50,000円
車両・リースなど30,000円
事業用サービスなど20,000円
合計350,000円

この場合、1か月まったく仕事ができなくなれば、約35万円が必要です。

3か月なら、

35万円×3か月=105万円

6か月なら、

35万円×6か月=210万円

となります。

ここから、家族の収入、公的給付、すでに用意している貯蓄などを差し引いていきます。

基本的な考え方は、

必要生活費+事業固定費-利用できる公的保障やその他の収入=自分で準備する必要額

です。

例えば毎月35万円必要でも、配偶者の収入などで15万円確保できるなら、不足額は月20万円になります。

この20万円を、

貯蓄で何か月対応できるのか
労災保険でどこまで補えるのか
民間保険を使う必要があるのか

という順番で考えます。

保険ありきで考えるのではなく、まず必要額を数字にすることがポイントです。

休業補償は「生活費」だけ考えればいいわけではない

独立したばかりの個人事業主が見落としやすいのが、事業を維持するためのお金です。

例えば美容室を一人で経営している場合、本人が病気で1か月仕事を休んだとしても、店舗の家賃は発生します。

建設業の一人親方であれば、車両ローン、工具・機械のリース、倉庫代などが残るかもしれません。

Web制作やライターなど自宅で仕事をしている人でも、パソコンの分割代金、クラウドサービス、通信費、会計ソフトなどが発生します。

休業対策をするときは、家計簿だけを見るのではなく、

事業の損益計算書や毎月の固定費も一緒に確認する

ことが重要です。

これを一度やっておくだけでも、

「最低でも月25万円必要だと思っていたけれど、事業経費まで含めると35万円必要だった」

ということが分かる場合があります。

職業によって休業リスクは違う

休業への備えは、職業によっても変わります。

建設業・一人親方

建設現場では、高所作業、工具・機械の使用、重量物の運搬などがあります。

仕事中の事故による休業を考えるうえでは、労災保険の特別加入を優先的に確認したい業種です。

ただし、休日の病気やケガまで労災ですべて補えるわけではないため、生活防衛資金なども必要になります。

美容師・整体師など店舗型の個人事業主

店舗型事業では、自分が休むことで売上が止まっても家賃などの固定費が残る問題があります。

特に「自分が施術しなければ売上が発生しない」業態では、休業リスクがそのまま経営リスクになります。

ライター・デザイナー・ITフリーランス

デスクワーク中心だから休業リスクが低いとは限りません。

病気や手術などによって長時間パソコンを使えなくなれば、納品そのものができなくなる可能性があります。

また、自分の知識や技術そのものを販売している仕事ほど、本人が働けないことによる影響は大きくなります。

配送・運送系

自動車やバイクを使う仕事では、事故だけでなく、骨折などによって運転できなくなるリスクも考えられます。

「日常生活はできるけれど、仕事はできない」という状態が起こる可能性があるため、保険を検討するときは「自分の職業で何が就業不能になるのか」を確認することが大切です。

ケース1 一人親方が現場で足を骨折した場合

例えば、建設業の一人親方が現場作業中に転倒し、足を骨折したとします。

医師から1か月の休業を指示され、現場に出られなくなりました。

労災保険に特別加入しており、その事故が業務災害として認められ、支給要件を満たせば、療養(補償)等給付や休業(補償)等給付などの対象になる可能性があります。

労災保険の休業(補償)等給付は原則として休業4日目からの支給です。

このようなケースを見ると、現場仕事をする一人親方にとって労災保険の特別加入を確認しておく重要性が分かります。

ケース2 フリーランスライターが病気で1か月仕事を休んだ場合

次に、自宅で仕事をしているフリーランスライターを考えてみます。

病気で入院し、退院後もしばらく仕事ができなくなりました。

仕事中の事故ではないため、通常の業務災害とは状況が異なります。

この場合に問題になるのは、

「治療費をどうするか」

だけではなく、

「1か月間売上がなくても生活できるか」

です。

例えば毎月30万円必要なら、最低でも30万円の資金が必要です。

さらに休業が2か月、3か月と延びれば必要額は増えていきます。

ここでは貯蓄に加え、契約条件に応じて所得補償保険や就業不能保障保険などが選択肢になります。

ケース3 美容室経営者が交通事故で2か月休業した場合

一人で美容室を経営している人が休日に交通事故に遭い、2か月仕事ができなくなったケースを考えてみます。

本人が店に立てないため、売上は大きく減少します。

しかし店舗家賃が15万円、その他の固定費が5万円なら、事業だけでも毎月20万円必要です。

さらに生活費が25万円なら、

20万円+25万円=45万円

必要になります。

2か月なら90万円です。

このようなケースでは、

「病院代を払えるか」

だけを考えていたのでは十分ではありません。

事業を継続するためのお金まで含めて休業対策を考える必要があります。

休業補償を考えるときに確認したいポイント

個人事業主の休業対策では、次の7点を確認しておくと整理しやすくなります。

  1. 1か月の生活費はいくら必要か
  2. 1か月の事業固定費はいくら必要か
  3. 現在の貯蓄で何か月耐えられるか
  4. 自分が加入している公的制度から何が受け取れるか
  5. 労災保険の特別加入対象になるか
  6. 民間保険の就業不能条件や支払対象外期間はどうなっているか
  7. 長期休業になった場合に事業をどう維持するか

この順番で確認すると、

「保険に入った方がいいのか」

という漠然とした悩みから、

「自分には毎月15万円分の不足がある」

という具体的な問題に変わります。

そうなれば必要な対策も考えやすくなります。

所得補償・就業不能保険を選ぶときは「月額」だけで判断しない

民間保険を比較するとき、

「月額2,000円」

「月20万円保障」

といった数字に目が行きがちです。

しかし個人事業主が確認したいのは保険料だけではありません。

特に重要なのが、

どの状態になったら給付を受けられるのか

です。

就業不能保障保険では、就業不能状態になってすぐに給付されるとは限らず、60日などの支払対象外期間を設けている商品もあります。また、所定の就業不能状態や継続期間は商品によって異なります。

例えば、

「61日以上働けなければ給付」

という契約なら、1か月の休業では給付対象にならない可能性があります。

一方で、短期間の休業に対しては貯蓄で対応し、長期休業だけ保険で備えるという考え方もあります。

つまり、

短期休業=貯蓄
長期休業=保険

と役割を分ける方法です。

この方が、必要以上の保障を抱えずに済む可能性があります。

精神疾患や在宅療養の扱いも確認する

保険を選ぶ際にもうひとつ確認したいのが、精神疾患や在宅療養の扱いです。

就業不能保障保険については、精神疾患を保障対象に含む商品と対象外の商品があります。

また、「在宅療養」という言葉が書かれていても、その定義は保険会社・商品によって異なります。

生命保険文化センターも、医師の指示による在宅療養の条件や精神疾患の取り扱いについて商品差があることを案内しています。

契約前にはパンフレットだけではなく、重要事項説明書や約款などを確認し、

「自分が想定している休業状態が本当に対象なのか」

を見ることが大切です。

個人事業主に必要なのは「保険」ではなく「休業対策」

ここまで休業補償について解説してきましたが、個人事業主に本当に必要なのは、必ずしも「保険にたくさん加入すること」ではありません。

必要なのは、

働けなくなったときでも生活と事業を維持できる仕組み

です。

例えば、1か月程度の休業なら貯蓄で十分対応できる人もいます。

反対に、住宅ローンや子どもの教育費があり、事業の固定費も高い場合は、貯蓄だけでは不安かもしれません。

建設業など仕事中の事故リスクが高い人なら、まず労災保険の特別加入を確認するという順番が考えられます。

長期間働けなくなった場合の収入減が心配なら、所得補償保険や就業不能保障保険を検討する余地があります。

大切なのは、

公的制度+労災+民間保険+貯蓄

を別々に考えるのではなく、全体として考えることです。

生活防衛資金を作っておく

休業対策の基本になるのが現預金です。

数日程度の風邪や軽いケガまで、すべて保険で備える必要はありません。

むしろ短期休業については、ある程度の現預金を用意しておく方が柔軟に対応できます。

例えば毎月30万円必要で、180万円の生活防衛資金があれば、単純計算で6か月分です。

実際には医療費や突発的な支出などもあるため単純計算どおりにはいきませんが、

「何か月仕事ができなくても大丈夫か」

を把握する目安になります。

独立したばかりで十分な貯蓄がない場合は、毎月少しずつでも「休業用資金」を別口座に積み立てる方法もあります。

売上を本人だけに依存させないことも休業対策になる

保険や貯蓄だけでなく、事業そのものを見直すことも休業対策になります。

例えば、自分一人が毎回作業しなければ売上が発生しないビジネスは、本人の休業リスクがそのまま事業停止リスクになります。

長期的には、

継続契約を増やす
作業の一部を外注できるようにする
業務マニュアルを作る
取引先との連絡方法を整理する
自分が不在でも一部業務が動く仕組みを作る

といった対策も考えられます。

特に一人経営の場合、

「もし明日入院したら、顧客への連絡はどうするか」

を一度考えておくことをおすすめします。

休業補償というと保険の話になりがちですが、本当の意味での休業対策は経営そのものにも関係しています。

個人事業主・フリーランスの休業補償についてよくある質問

個人事業主でも傷病手当金はもらえますか?

会社員などが加入する健康保険の傷病手当金と、国民健康保険は制度が異なります。

国民健康保険法上は、市町村や国保組合が条例や規約により傷病手当金などを支給することが可能ですが、全国一律で会社員と同様の傷病手当金が支給される制度ではありません。自分が加入している保険者に確認しましょう。

フリーランスでも労災保険に入れますか?

一定の条件を満たせば特別加入できます。

2024年11月1日からは、企業などから業務委託を受けるフリーランスについて、業種・職種を問わず特別加入できる範囲が拡大されています。ただし対象外となるケースもあるため、自分の働き方に対応した加入区分を確認してください。

労災保険に加入していれば病気でも補償されますか?

すべての病気が対象になるわけではありません。

労災保険は仕事または通勤が原因となったケガや病気などを対象とする制度です。業務と関係のない病気や私生活上のケガについては、別の備えを考える必要があります。

所得補償保険と医療保険は違いますか?

目的が異なります。

医療保険は主に入院や手術などに備える保険ですが、所得補償保険は病気やケガによって就業不能となった場合の所得減少を補うことを目的としています。

就業不能保険は何日休めばもらえますか?

商品によって異なります。

生命保険文化センターによると、14日、30日、60日、61日など、所定の就業不能状態の継続期間は商品によってさまざまです。契約前に支払条件を確認する必要があります。

休業補償はいくら準備すればいいですか?

一律に「月○万円」と決めることはできません。

まず、

生活費+事業固定費

を計算し、そこから家族の収入や公的保障などを差し引いて不足額を確認しましょう。

その不足分について、貯蓄・労災・民間保険などを組み合わせて備える方法が考えられます。

貯金があれば所得補償保険はいりませんか?

十分な貯蓄があり、長期間働けなくなった場合でも生活や事業を維持できるのであれば、民間保険の必要性は相対的に低くなるでしょう。

一方で、住宅ローンや教育費、事業固定費などが大きく、長期休業による資金不足が心配な場合には、保険を利用してリスクの一部を移転する考え方があります。

必要性は家計や事業状況によって異なります。

まとめ|個人事業主は「働けなくなったとき」から逆算して備えよう

個人事業主やフリーランスにとって、自分自身は事業を動かす重要な存在です。

会社員であれば勤務先や社会保険制度による保障を受けられる場面でも、独立すると自分で準備しなければならない部分が増えます。

特に確認しておきたいのが、

病気やケガで1か月、3か月、6か月働けなくなった場合に、生活と事業を維持できるか

という点です。

まずは毎月の生活費と事業固定費を計算してください。

次に、自分が利用できる公的制度を確認します。

仕事中や通勤中の事故については、労災保険の特別加入が利用できないか確認します。

そのうえで不足する部分があれば、所得補償保険や就業不能保障保険などの民間保険を検討するという順番です。

重要なのは、

「とりあえず保険に入っておけば安心」

と考えることではありません。

個人事業主の休業対策は、

公的保障、労災保険、民間保険、貯蓄、そして事業そのものの仕組み

を組み合わせて考えるものです。

病気やケガが起こるかどうかを予測することはできません。

しかし、

「もし明日から仕事ができなくなったらどうするか」

を今考えることはできます。

独立したばかりの時期こそ、一度自分の生活費と事業固定費を数字にしてみてください。

必要な金額が見えれば、自分に必要な休業対策も見えてきます。

 

この記事を書いた人 Wrote this article

HachinoTamotsu

会社員から自営業者へ、 パソコンを使った仕事だけでなく体を使った仕事も行っており、見たり聞いたりしたことや、今まででぶつかってきた壁などの経験をもとに、副業・フリーランスや転職などのキャリア選択の助けになる情報発信しています。